スプリンクラーの表示~Dreamer

アメリカのゴルフ場は、乗用カートのセルフプレーが
主流で、ほとんどキャディがいないというのは
ご存知の通りです。

そのため、セカンドショットでの残りの距離は
だいたいスプリンクラーヘッド(蓋)に描かれた
グリーンセンター、もしくはグリーン手前までの
距離表示に頼らざるを得ません。

しかし、残り距離が300ヤードもあるのに
グリーンまでの距離を探そうとするプレーヤーもいます。
そんな自信過剰なプレーヤー向けに、
実際の距離表示を300ヤードと表記する代わりに
色々な表現がされています。

そのひとつが「Dreamer」です。
文字通り「夢をみている」という意味ですが、
遠巻きに「届くわけないだろ、グリーンが空くのを
待つのをやめて、変な期待はせずにさっさと打て!」
と言っているのです。

そのほかにも、「No Way」(無理)や、
「All you got」(最高のショットをしても届かないよ)
というのもあります。

ひょっとして届くかなと、浅い期待を抱いてマーカーを
探していたプレーヤーたちも、思わずブッと噴き出して
しまいそうなフレーズを並べています。

池越えのセカンドショットで、グリーンをとらえる距離か
どうかを判断するときなどは、スプリンクラー蓋の上に
「Do not even think about it.」(グリーンに
のるなどと期待すらするな。とっとと刻め)と書いてある
ものを目撃したこともあります。

たとえば、295ヤードと実測距離を描くよりも、
「No Way」と描いた方が、プレーヤーとしても納得して
あるいはヘンな期待もせずに速やかにセカンドショットが
打てるというものです。

今まで、うぬぼれ屋で気難しい人とはたくさんラウンドを
ともにしてきましたが、このようなサインを見かけて
まだ誰一人としてむきになって「失礼だ!」なんて
怒り始めた人を見たことはありません。

たいていの人は思わず笑いだし、
他のプレーヤーにこの表示のことを伝えて、
みんな和んだ雰囲気の中でプレーを続けています。

ジョーク好きのアメリカらしいと言えば、
確かにそうですが、やはり、ゴルフをあくまで遊びのひとつ
と考えているからこそ、こんな遊び心に飛んだフレーズが
できるのではないでしょうか。

もちろん、その表示があるホールで300ヤードちかく
グリーンまであるのに、何を考えているのか、
グリーンが空くまでまっているDreamerたちも
いないわけではないでしょう。

でも、もしそんな人がいたら、その人を待っている後続の
グループから「Check the sprinkler head!」
(スプリンクラーの表示を見ろよ)と叫ばれるのが
目に浮かびます。

日本でも、最近はセルフプレーが増えてきていると聞きます。
そうなると今までと違って、いろいろなアナウンス看板など
必要だろうと思います。でも、こんなちょっとした
ユーモアがあれば、プレーヤーが抱くイメージも
随分と違うと思いませんか。
ラウンドだって楽しくなるはずです。

ぜひ、たくさんのコースで取り入れていってほしいものです。

(by REX  2006年ゴルフ場セミナー4月号「REX倉本のアメリカンな話」より)